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往けよ目指せよ彼女のもとへ(側塔編)-1:Minoritenとこの


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往けよ目指せよ彼女のもとへ(側塔編)-1

 やべーこっちのがたのしー。
 あ、いや卒論と二次創作の話じゃないっすよ。
 けどなんかやり過ぎたなと思ってますあれとかあれとか。

 ところでポテトサラダにゆで卵ってやっぱり地味すぎるだろうか。本当なら玉葱入れるべきなんだろうけど正直玉葱は嫌な辛味取るのが難しい。さらすだけじゃ足んねー。
 侵入者どもの話は聞いていたから、執政官が自分たち補佐官を収集させるであろうことは想像に容易かった。だが男の意欲は、そんな勅命如きでは到底膨らませそうにない。
 何せこの大陸は人魔を統合した国が最大国家になってしまったのだから。その謀反者どもとやらの目的はまだ明確に分かっていないが、この国家に盾突こうとしているのならば失笑ものだ。自分でさえ打ち破ることができなかった元皇女と、助けを求めればすぐにでもやって来るであろう大魔王の娘を相手に、どこの馬の骨とも知らぬ若造どもが大挙して押し寄せたところで、どうにもなるまい。
 しかし、それでも男は補佐官だから――格好だけは忠実に、執政官の下へと急がねばならなかった。
 何より自分は反逆の首謀者であったし、その影響は今も尚続いている。大きな処罰こそは下らなかったものの、他の補佐官と違い人間の近衛兵を多く付けられ、現状は守られていると言うよりも監視されていると言っていい。それだけでも屈辱的なのに、更に戦時中の敵の本拠地であったワルアンス城に自分たちが住まうことになるとは。この城の地下で散っていった同胞たちの犠牲を忘れぬため、人間の執政官たちはキングソルフィンに住まうのだから痛み分けだと執政官はうそぶくが、本心かどうかは分からない。それよりも、自分への嫌がらせの気持ちもあるだろうとさえ思っていた。
 実際にそこまで執着した嫌がらせを受ければある意味で立派なものだが、男の気持ちはちっとも晴れないし、歪んだ征服欲さえその心には芽生えなかった。簡単に、執政官は男の好みではないのだ。
 だから幸か不幸か、男は執政官に対して他の補佐官よりも忠誠心が薄い。だからこそ、信頼されているとは思えず、行動で自分の忠誠を示さねばならないと考える。そしてこの場の忠誠とは即ち、執政官の無事を守ることであり、具体的に言えば執務室周辺の警備だ。
 無論、傍に控える鎧の魔族は馬鹿ではないから近衛兵を大量に配置するだろうが、それも間に合わぬ場合もある。そういう場合、助け舟として自分もやって来るのであれば無駄ではあるまい。いらぬと言われれば謀反者を捕らえに、執務室へ通ずる道を封鎖するまでだ。
 否――、そのほうがいいかもしれない。
 男は多くの人間兵を従えていたにも関わらず、急に立ち止まる。側面についていた隊長が片手を挙げて一小隊を停止させ、それから声をかけた。
「…如何されましたか、シーグライド様」
 いつもは慇懃な物言いが癪に障るが、今の男はそれさえ許せた。
「……執務室へは行かぬ。それに通ずる通路があるのなら、それを我々で守護せよ。総領とアシュレイ殿の手を煩わせるな」
 本当に急な上司の発言に彼らは一瞬驚いたが、そこはさすがに共和国の近衛兵として動揺を見せるわけにはいかぬ。敬礼し、了承すると、隊長が人数を均等に分けさせる。
 それに対し、男は鬱陶しげに首を振った。
「私も総領をお守りするのだ。私を差し引いた人数を他の分隊にやっておけ」
「しかし、シーグライド様のお手を煩わせては我々の…」
「よいと言っている」
 威圧的な男の言葉に、隊長は不承不承に頷いた。
 かくして男は邪魔な隊長から解放され分隊を率いると、颯爽と執務室に通ずる、最も広々とした通路に向かった。
 守るのが煩わしいのならば、こちらから罠を張ればよかったのだ。待っているなんて性に合わない。自分が謀反者を捕らえれば忠誠の証と見られ、執政官も自分への待遇を考えるだろう。そうすれば、またソーディアンのような部隊を育成する機会が生まれるかもしれない。
 他の通路から入り込み突破されても、自分の部署の兵であれば防衛の考慮は評価される可能性はある。いずれにせよ、これは男にとって機会と考えればいい。
 そう思うと、男は本当に久しぶりに体内の血肉が疼く感覚を覚える。鍛錬ではなく手加減抜きで、阿呆で脆弱で姑息な侵入者を成敗できるのであれば、ストレスのはけ口にもなる。
 口元に笑みを浮かべるのを堪えながら、男は侵入者がやって来るであろう通路を見る。灯りが点され、塵一つ落ちていないものの、殺風景なのは否めない光景であったが、男はそれを見るだけで胸の中が期待に膨れ上がる――はずだった。
「しっ、シーグライド様ッ!」
 まだ新米なのか、若い兵士の緊張したような声が背後から聞こえてきて、男は大いに盛り下がった。
 自分が急かしたとは言え、何の覚悟もない輩を自分の分隊に引き入れるとは何たる早計。だが、足を引っ張られると思うのは、それに期待をしているからだ。最初から期待しなければ何の感情も荒立たない。逆に、邪魔になることを想定するのが賢い選択だろう。
 そう自分に言い聞かせ振り向き、余裕たっぷりにその新米兵を見下ろしてやる。予想通り、若く緊張した面持ちの兵士は、他の先輩兵から批難めいた視線を送られていた。
「何事だ。私語は慎め」
「は…はいっ! し、しかし、あの、一つ伺いたいことがありまして…」
 しつこいと一括したくなったが、それでは男のほうが虚勢を張っていると思われてしまう。それも癪なので、黙って発言を促した。
「く、件の謀反者は、兵舎を氷漬けにしたと聞きました。…魔封じの結界が張られた城内で、そのようなことはできるのでしょうか?」
 なんともくだらない質問だ。そう思い、男は鼻で笑う。
「当然だ。この城の魔封じは人間と魔族の境を鈍らせる程度の抑制でしかない上に、シンバ帝国式の魔術にしか効果がない。帝国が禁呪と戒めた術式であれば…」
「で、では、その謀反者は禁呪に精通しているということですか!」
「それがどうした。よもや、それしきで貴様は謀反者を恐れるのではあるまいな」
「い、いえ…そんなことは」
 俯く新米兵ではあるが、その恐怖は誰の目にも明らかだった。
 しかし、この兵が恐怖するのは当たり前のことでもある。
 この大陸に古くから伝わり、今は禁呪となってしまった天魔や魔界粧に連なる魔術系統は今は学ぶすべもなく、伝えられているのはその危険性や破壊力のみである。弱い術でも百以上、強力なものなら千の兵を一瞬で屍に変えた呪術やその使い手は今の大陸にほんの一握りしか残っておらず、魔術と言ってもモンスター退治や補佐魔術などの小ぢんまりしたものしか知らぬのであれば、その桁違いの破壊力に慄くのは道理だ。
 新米兵は、恐らく氷漬けにされる兵舎など想像も出来ないのだろう。実際に高位魔術師の放つ魔術でも、建物ごと凍らせられるほどの威力はない。
 男はそう歴史も経験も浅い兵を内心嘲笑ったが、しかし言われて気がついた。そこまでの魔力と古からの魔術を使うような輩がいたにも関わらず、今の今まで大人しくしているのは何故なのだと。
 七年戦争が終わってから約二十年だ。戦後生まれの純魔族であっても、なかなかの魔力を有し、禁呪を学ぶのは容易ではない。自然、戦時中からそこそこの魔力があることになるが、今このときに謀反を起こすほどの力があるならば、戦時中に自分の力を示せばいい話だ。
 どうしてその謀反者は、今になって姿を現すのか――いや、今はそんなことを気にしている場合ではなく。
「ひっ」
 再びの思慮を遮る兵士の声に、さすがの男も苛立った。物音に反応した程度で、何をそんな――。
「しっ、シーグライド……ざまッ!」
 振り返り、男は信じられないものを見る。
 そこにいたのは魔族の男だった。
 魔族はただ立っているだけで、その手中には白銀に輝く豊かな髪の女が納まっている。
 けれどその男の周囲は何だ。
 先ほどまで口を利いていたはずの、煩わしい新米兵の歪んだ顔が見えた。他の人間兵も同様に、まるで水面ごしに見えるように体全体が歪んでいる。当たり前のように氷で全身を覆った、人間たちの氷柱がそこにはあった。
 そして何よりシーグライドは全身で感じていた。その魔族を見た瞬間に湧き上がる、戦時中にでさえ感じたことのないような緊迫感、高揚感、神を眼前にした信徒のような、血に受け継がれた畏れを。
 その魔族はシーグライドとは違い、痩身だった。しかし一切の無駄のない体は俊敏性に富み、その手だけで人の頭蓋骨を叩き割ることなど造作ない。
 その魔族はくすんだ銀髪を短く刈っていた。髪は魔力の源だと言うのに、その魔族は千の軍勢を滅ぼす魔力を持っている。
 その魔族は誰よりも、シーグライドは当然ながらヴァンパイヤの王も、自分が敵わなかった執政官よりも鋭く冷たく重い魔力を放っていた。敵う相手がいるとすれば、きっと本気になった爆炎の申し子だけだろうと思わせるそれを。
 その赤い瞳は二次戦争と七年戦争を生き抜いてきた古強者であるシーグライドを塵芥のように見下し、その唇がふわりと開かれる。きっとシーグライドを魔粧の氷に封じ込めるために。実力のある彼さえ凌駕せしめん魔力を持つ存在が。
「へっ、陛下っ…お待ちしておりました!」
 威圧感に絡んだ喉が、辛うじて動く。
 反射的に膝を折るシーグライドの態度に、陛下と呼ばれたその魔族の動きが止まった。
 顔を伏せ、血の色の視線と重圧にじわりと汗を掻きながら、シーグライドは言葉を続ける。
「陛下が封印され幾星霜、再びこの地に降臨されることを、私は…!」
「執政官とやらはどこにいる」
 遮る声は尊大で、優男のような甘さがあるのにまるで容赦がない。しかし大魔王に連なる人物に、自分が道具のように扱われるその非道さは、むしろ心地良かった。
「は…。執政官ロゼは、この奥に……」
 それを聞いて、魔族は悠然と歩き出す。確認した以上、シーグライドには何の必要性もなくなったと言わんばかりに。
 しかし、シーグライドには用件がある。少なくとも、その魔族には尋ねたいことも聞き届けて欲しいことも幾つもあった。しかし、今の彼に余裕がないことも含め、それを全て叶えられるほどの饒舌も、機転も持ち得ていなかった。
「お、お待ち下さい陛下! 陛下は、一体なぜ今になって…」
「貴様は…」
 平淡な口調だが有無を言わせぬものを感じ、シーグライドは押し黙る。大魔王ジャネスに次いで自分の畏敬の象徴たる人物の言葉を、自分が遮ってはならないと思い。
「口出しする気か。俺の挙動に」
 その魔族は振り向こうとさえしないのに、背筋が凍る。更に頭を下にし、シーグライドは必死になって頭を横に振った。
「いえっ…滅相もございません! 陛下の御武運をお祈り致します!」
 しかし、その言葉も聞こえているかどうかわからないうちに、魔族はシーグライドの前から姿を消していた。しかし、シーグライドはそれすら気にならない。
 畏まった体勢のまま、彼は感動に打ち震えていた。頭も上げず、感涙さえ零しそうになっている。
 そう、自分を使う人物は、ここまで無慈悲でなくてはならないのだ。だからこそ、半端にこちらを慮ろうとする執政官を主と思えない。力を示すことが魔族にとって最も本能的な忠誠心を煽るのだから、その点では確かに執政官の方法は間違っているのだ。
 きっとそんな執政官に鉄槌を下すために現れたのだとシーグライドは固く信じる。人魔の合いの子である半端者が政権を握るなど、妹姫の執政さえ許しはしなかったあの魔族なら容赦はすまい。
 暫く待てば訪れるであろう、本当の魔族支配の時代に打ち震えながら、シーグライドは感嘆の吐息をついた。
 周囲の氷柱に閉じ込められた人間兵など、既に彼には眼中にもなかった。
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