本作を一言で表すのならばこう言えましょう。
「それなんてエロゲ?」 ざっとあらすじを説明すると、青年貴族フェリックスがパーティーで出会った貴婦人アンリエットに一目惚れ。ストーカー精神で彼女の居場所を見つけるも、彼女は伯爵夫人の上に、慎み深く、敬虔なカトリック信者だったので、容易に口説き落とす事も出来ない。
ようやく彼女と相思相愛の仲になるも、一線を越えることはままならず、やきもきする時期が長く続く。そうこうしているうちに社交界に出たフェリックス、ダットレイ夫人なる美しくも悪魔のような女性と肉体関係を持つ。
いくら誉めそやされ、精神的な愛を謳われたところで、他の女の言いなりになるような恋人なんか必要ありません。アンリエットは恋人の裏切りに心を痛め、遂には死に果てます。
彼女の臨終を看取ったフェリックスは、その地で自分の居場所をなくし、その衝撃のままダットレイ夫人を公衆の面前で侮辱。その上、それらを全て告白した上で自分を愛してほしいと二重に告白したナタリーなる女性には「そんな立派な恋をした方には引け目を感じます。お友だちでいましょう」とフられてエンド。
……うーむ。人妻モノエロゲで救済の一切ないワーストバットエンド。
自分の頭の中でフラグとエンド名が出てくるほどわかりやすいですな、こうまとめると。
とりあえずアンリエットエンド3種、(旦那死んで離婚してラブラブエンド、心中エンド、僕はあなたしか一生愛しませんエンド)、アンリエットの娘と結婚して親子丼エンド、ダットレイ夫人エンド、ナタリーエンド、はガチ。
とりあえず、バルザックの実体験が含まれているらしい本作、冷静に見れば見るほどフェリックスのへたれっぷりが笑えます。
しかも惚れた相手も悪かった。片や何でも見透かす聖女のような道徳心の塊、片や欲深くサディスティックな背徳・愉悦の塊で、両方容姿、言動、ともに極上なおかげで男側としては手放せない、けど絶対幸せにはしてくれそうにないお二人様。
そんな二人の間に自ら入り込んじゃった男なので、この結末はまあ納得。臨終の間際に書かれたアンリエットからフェリックスへの手紙で「あなたが理性を失わないかとすら思っていました」な発言はますますエロゲを思い立たせ、昔も今も、この手の告白はテンプレなのかと実感。
この作品は「恋愛には肉体も精神も絡み合ってこそ! どっちかしかやってないとヤバいよ!」と言いたいわけなんだろうけど、その両方を求めれそうだったナタリー嬢には尻込みされてる辺りが物語のオチとしては秀逸。
つーかあそこまで豪華な恋愛暦語られたら、普通の女ならそりゃ付き合えないって言うわ。
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