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往けよ目指せよ彼女のもとへ(側塔編)-2:Minoritenとこの


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往けよ目指せよ彼女のもとへ(側塔編)-2

 久々に。
 どうでもいいけど枝豆茹でてると家中がポップコーン臭え。

 あと40代ギュフィが想像し辛くてギギギ。大体二世のGOCバージョン老けすぎだろ! てめえいつの間に40越えて50代になりやがった!
 三世は髪の質感からして外見は父親似てないくさいしさ!
 その眼光は、自分がまだ未熟な子どもの頃、自分は「王子さま」と周囲に可愛がられ褒めそやされた時代、最も苦手だった存在を思い出す。
 物心付いたのが丁度戦時中だったこともある。
 バージス王国領であり、王国の祖でもあったジャピトスのチャクトラル城が戦の争いに巻き込まれ、国民の不安はプラティセルバの本城にも感染していた。
 だからこそ賢君として知られていたバージス王は、普段の態度を硬質なものに変えて、自国の領地をこれ以上他国に蹂躙させてはならぬと気を張り続けた。それは幼い子どもには高圧的なものに感じて、そんな最中の父との対面はひどく重苦しく、ひどく辛かった。いたずらをしてバルコニーに閉じ込められる罰よりも嫌な『公務』だった。
 そしてそれよりも辛いことは、皇国――後半は共和国だが、父はどちらかと言うと旧皇国寄りであった――へ挨拶に行くことだった。
 国中が新年の門出に浮かれている中、バージス王国の未来を継ぐ兄弟たちは暗雲たる気持ちのまま馬車に揺られてワルアンス城を目指したものだ。
 どうして挨拶が嫌なのか。答えは簡単、待ち時間が異様に長い上に怖い人ばかりと対面しなくてはならないからだ。
 浅黒い肌をした魔族と人間のハーフは、態度も目つきもぶっきら棒で単純に怖くて、視線が合うと兄弟共々、椅子の上で跳びあがりそうになった。
 ヴァンパイヤ一族の王でもある男は多少気さくではあったが、それ故に自分が情けなくなるような堂々とした雰囲気をまとっていたし、時折物騒に輝く牙や爪が殊更異形に見えた。
 金髪の魔族なんかは最悪だ。ただでさえ居心地の悪い子どもたちを無遠慮な視線で眺めると、一笑に付しあからさまに見下して自信を折る。子どもなのだから未熟なのは当たり前だが、何もそこまでしなくてもいいじゃないかと当時は無性に泣きたくなったものだ。
 それに比べれば彼らの上司であり、執政官と言う名を冠した皇帝は、随分ましなほうではあった。女性であるせいか凛とした姿勢も華々しく、居心地の悪い子どもたちに優しい言葉をかけてくれたりもした。だが微笑みさえ見たこともなく、玉座にいるそのひととしか会ったことがないのだから、やはり隔たりは感じられた。
 彼らは一概に人ではないこともあるかもしれない。だが、皇国には人間もいた。ワルアンス城にいる将の中で最も子どもたちに人気があったのは、誠実で言葉少ないが優しい老将軍だが、彼は何度も会わないうちに引退した。
 もう一人は、ナハリの太守を兼ねているためか多忙であまり会えた覚えはない。それでも辛うじて覚えているのは、幼い頃の父にあった硬質さと、子ども心に理解できない重みのある振る舞い。
 その重みが何なのか――今となっては痛いほどよく分かる。何故なら自分はその重みを今しも手放そうとしているのだから。

 その視線にやはり纏わり付くような重圧を感じ、レ・グェンは少し笑う。自分に余裕を取り戻せと言い聞かせるように。
「ギュフィ様、ねえ。…まさかここであのギュフィ王に会えるなんざ思わなかったよ」
 同じくその名の権威を嫌と言うほど知っているエトヴァルトは、そんな余裕などない。
「軽口を叩くなら、振り切れる自信でもあるのですか」
「全くないね。しかし、そういうあんたも暇さえあれば逃げ切れるって思ってるのかい?」
 エトヴァルトが押し黙る。勿論、そんなことができるとは思えないと。
 何せ相手は七主将の生き残りであり、この城の執政補佐官。この城の構造も、この場の欠点利点も、人間の捕え方や殺し合いですらも、全てにおいて彼らより圧倒的に優位な情報と経験がある。
 だからこそ、すぐさま自分たちに襲いかかるような真似はしないのだろう。騎士道精神と余裕溢れるその姿勢は、今の彼らにとって死刑執行の祈りの時間に似ていたが。
 具足の音が次第に近付いてくる。この間に逃げ切れればどんなに嬉しいかと思うが、背を眼前に立つ男にそむけた瞬間、一撃喰らわされていることは間違いない。
「…………」
 削ぎ落とされるような時間の経過を味わいながら、彼らは男と向かい合う。
 男の姿は先ほどと全く変化はない。零れ落ちる砂金のような質感の金髪を清潔に襟足で切り整え、女性的な優雅さがあった相貌は四十を過ぎることで男性的な重厚感と逞しさを持ち、多くの貞淑な御婦人方の心を揺さぶるに相応しい色気と安定感を滲ませる。
 白いタイに翡翠と金の留め金、厚手の鳩羽色のコートと更に暗い色のズボンという軽装に、しかし付け入る隙は全くない。一見すれば上品な茶話会にでも出かけられるような服装だが、その体格や先ほどの動きから戦後も自らの技と力を磨き続けた男の性格と実力が見て取れる。
 ギュフィも彼らの実力を推し量らんとするように一瞥しながら、静かに口を開いた。
「私を知り、あのリーザと懇意だとは。…昨今の逆賊は教養があるようだ」
 独り言のようではあるが、確実に彼らに向けて投げかけられた言葉に、先頭のレ・グェンはふざけるように笑う。
「そりゃあ、ギュフィ王家と言えば、由緒ある王族サマだからな。そんじょそこらのチンピラだって知ってるさ」
 それは事実だったが、ギュフィは気にも止めない様子で目を細めた。
「ですが、貴方がたは無頼漢や賊の類ではない。例えばそこの…お嬢さん」
「………っ」
 エトヴァルトの背後で戸惑っていたアリアが、杭を打たれたように反応する。
 事実、アリアは偶然得た財宝を狙うつてに頼る下卑びた連中にも、その情婦にも見えないだろう。かと言って、彼らには変装する時間も手間もないし、そんなことで自分たちの罪が軽減されるわけでもないだろうが。
 それでも自分たちの目的や正体が分かったわけではない。そう自分に言い聞かせたレ・グェンは、内心の緊張を悟られないように口元だけで笑みを見せる。
「ま、あの子は巻き込まれた側だからな」
「そして、貴方がた二人はいつか見覚えがあるように思いますが…」
 対面したとすればレ・グェンより最近であろうエトヴァルトが、自らを陰に隠すように一歩下がる。レ・グェンのほうも、試されていることを分かっていながら首を傾げる。
「よく似た他人、かもしれませんよ」
「俺もそう思うねえ。俺たちは、あんたみたいなお偉いさんに会えるような身分じゃないさ」
「確かに、私が以前貴方と似た人物と出会ったのは十年以上前のこと。面影など、残っているかどうか…」
 ギュフィの、平淡だがそれだけにはっきりとした意思を相手に伝える視線は、とぼけたような笑みを貼り付けたレ・グェンへとピントを合わせられる。
 レ・グェンは内心焦る。気づかれている、恐らく、きっと。
 しかしそれでも彼は自分の正体をばらすわけにはいかない。ばらしたところで皆が捕えられない理由にはならない。それどころか最低の場合、故郷に泥を塗ることになる。そんな真似だけはしたくない。故郷を捨ててしまった身の上であっても。否、故郷を捨ててしまったからこそ、この相手にはばらすわけにはいかない。
 情けなさを強調するように、レ・グェンはギュフィに懇願の視線を送る。
「わからないんなら気にしない方向で行こうぜ。まあ、そいつに似てるんならそれはそれでいいからさ、俺たちみたいなチンピラくらい、見逃すつもりはないかねえ……」
「お断りします」
 断固と告げて、ギュフィは背後の暗闇に短いやり取りをする。多分、そちらに兵士が到着したのだろう。そのせいか、具足の音は既に消えているが、代わりにじっと息を潜めているようなか細い金属同士が擦れ合う音が聞こえている。
 暗闇の向こうに何人の兵がいるのか。
 アリアが生唾を飲み込んで、必死に杖を握った。物理的な攻撃力のあるものではなくても、他に彼女が頼れるものはどこにもない。
「兵舎と正門を潰し、本城に忍び込んだ貴方がたは、既に謀反者として処罰するよう総領に仰せつかっている。貴方がたを見逃すということは、私が総領を裏切るも同然」
 無論、そのようなことを人と魔族との戦いの中で後者の側を取ったギュフィほどの忠臣が選ぶはずがない。
 しかし、それよりも彼らに驚愕を与えたのは、勅命の速さだった。
「謀反者だなんて、まさか、リーザさんたちが捕らわれて…」
「まだ探せてないだけだろ、そうに決まってる!」
 アリアとヴァンの出した動揺は、無論他の二人にもある。
 表情が固くなったレ・グェンを一瞥すると、ギュフィはゆっくりと剣を掲げる。
「その様子を見るに、どうやら貴方がたは謀反に加担はしても首謀者ではないようですね。…ならば、殺すには及ばない」
 簡単だが物騒な言葉だと、彼らは武器を構えながら思う。殺さないでもらえるのは嬉しいはずなのに、全くそんな気分にならないのも珍しい。
 何故ならそれは。
「本当に他人の空似かどうか、捕えてじっくり聞き出すとしよう」
 その言葉を合図に、一斉に兵士たちがこちらに走り出す。まるで、処刑人が振り上げた斧が、首切り台に吸い込まれていくかのように。
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