忍者ブログ

[PR]:Minoritenとこの

往けよ目指せよ彼女のもとへ(通用口編)-1:Minoritenとこの


[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

往けよ目指せよ彼女のもとへ(通用口編)-1

 なんかテンポが悪い…。
 鎖のアクション用練習も兼ねて書き出したけど、難しいのう…。

 ちなみに昨日はメッセのテレカでSS一丁書こうと思ったけどバイトなので時間切れでした><
 レ・グェンは全員を見回すと、一息吐いた。これで自分が仕切る出番は終わった、という気持ちで。
 しかし、これはあくまで事務作業に過ぎない。――むしろここからが本番、今からは失敗も抜け駆けも単独行動も許されないことになる。組み分けすることで人数が減り身軽にはなったが、それだけ各自の責任も大きくなっただけの話。
 それもどこ吹く風のゼロスとアイテムハンター三人組に、恐怖も迫害も慣れているのかヒトゲノムたちはいつもと変わった調子はない。ファイルーザやイサクはともかく、若い四源聖の二人ももう感情を切り替えた辺り、案外世間擦れしているのかもしれない。
 悪人扱いされたことに放心していたヴァラノワールの子どもたちを横目で見るが、その表情はいまだ締りが感じられなかった。それを見て、彼の中のお節介焼きがむくむくと膨らみ、彼らを含めて再度くじ引きでも――と思いかけ、結局やめた。彼もそこまで他人の面倒を見ている余裕は、残念ながらあまりないと言えるからだ。
「礼拝堂側の退路確保が一番近いから、先発隊と斥候は俺たちの組がやる。アリアたちも、それでいいか?」
 振り返り、同じ組み分けになった仲間たちに目をやると、彼らは軽く頷いた。異論はないということだろう。
「だったら、次はあたしたちが行くわ。ナイヅさんたちは、その次でいい?」
 リーザがそう言えば、ナイヅは軽く首を捻る。
「いや、俺たちより対面側の退路を確保するイサクたちのほうが目的地が遠い。早めに行ったほうがいいんじゃないのか?」
「悠長に譲ってたらあいつら見失うだろ」
 とにかく早急に事件の発端となった依頼人に報復したいゼロスがそう口を突っ込むが、魔王たちの目印は分かりやすく残っているはずだ。だからナイヅは譲っても構わないと思ったのだが。
「しかし………」
「あたくしたちのことなら、お気遣い頂かなくてもよろしいですわ。ねえ、ブリジッテさん」
 イサクと同じ組になったファイルーザが同胞にそう声をかけると、彼女は動揺を押し隠すような笑みを浮かべた。
「ま、まあね。あたしは悪人扱いには慣れてるし、観光がてらゆっくり行ってるわよ」
「お嬢、こんなときに観光はないでしょ」
 すかさずヴァンが呆れたように指摘するが、それで大人しく訂正するような彼女ではない。逆に盛大に食ってかかった。
「うるさいわね! ヴァンこそ、あたしが目を離した隙に手抜きなんかしたら承知しないわよ!」
「そんなことしませんって。お嬢を抑える必要がないんだから、むしろ気が楽に…」
「気が、なんて…!?」
「ええいやっ! な、なにも!」
 相変わらずの光景に、レ・グェンは呆れを通り越して感心したように漏らした。
「…よくこんなときに、いつもの調子でやれるもんだな」
 その呟きに反応するのは、騒がしい二人を除いた男装のお守り役しかいない。あれほどの短期間の休憩しかないのに、彼女も普段の調子に戻ったらしい。
「お嬢さまのおっしゃる通り、私たちは犯罪者扱いに慣れていますから。さすがにこのような大規模な場所を舞台にした経験はありませんが、領主の屋敷に忍び込んだり、罵られる経験なら……」
「意外に、修羅場潜ってるねえ」
 シオラもほとんど感心したように呟く。
「それじゃあ、お言葉に甘えて俺たちがリーザの次に行くとしようか」
「よし。――アデルたちは、皆が行ったら」
「ええ、わかってる。援軍は任せて」
 覇気のない表情で言われても、いまいち頼りになれないが、彼らはそれを言わずにいた。優しく気遣ったところで彼らはそれに甘えてしまうだろうし、叱咤激励が通じるような精神状態かどうかも分かり辛い。ならば、知らない振りをするのが無難だ。とは思っていても、それに気づかぬ男もいる。
「はん。そんなツラしてる奴が援軍なんざ蹴散らせるかよ」
 普段と変わらないゼロスの挑発に、アデルは無言で睨みつける。恐らく彼女はその発現を前言させたいが、下手に反発したところで途端に本心を暴かれると思っているのだろう。彼女の本心など、彼女が思う以上に誰からも分かっているというのに。
「なんだ? なんにも言わねえってことは、言い返せねえってことか?」
「違うわよ。あなたの相手をする暇なんてないってこと」
「はあ?」
 慌てて二人の間に割って入るのは、宥め役の二人である。
「まあまあ兄さん。兄さんもこんなところで仲間割れするより、旦那の追跡用に体力溜めといたほうがいいだろ?」
「アデル…ゼロスの言葉を真に受けるわけじゃないが、もし君たちが無理そうなら」
 城内の退路用の地図を差し出そうとするナイヅに、アデルはゆっくりと首を振る。
「それも、わかってるから大丈夫です。心配かけてごめんなさいナイヅさん…」
「そんなことぐらいなら構わないよ。本当に心配なのは、君たちが俺たちの背中を守れないことよりも、君たちが逃げる気力も立ち向かう気力も失ってしまうことだからね」
「……はい……」
 掻き消えそうな返事だった。自責の念に駆られているのか、それとも甘い言葉に頼りたくなっているのか。
 それでも信じるしかないのが現状だ。ナイヅはそう自分に言い聞かせると、内心苦笑を噛み殺しながら同じ組み分けの仲間たちのもとへと歩いていった。恐らく自分が召喚されたばかりの頃、自分の好きにさせてくれた仲間たちは、こんな気分でいたのだろうと思いながら。

 軽いノックを三度続ける。反応はなし。
 それでも暫くドアの向こうの反応を待ち続けるが、無音と表現できるほど静かだった。
 しかし、城内に侵入者が入ったことを知らされているのならば相手の警戒もこれ以上であるはずだ。そう思い、息を殺して待っていた先発隊だったのだが、それに痺れを切らした人物が後方に控えていた。
「……おい。いつまで待つ気だ」
 狭い通路内に響き渡るゼロスの声に、レ・グェンは本気で額をぴしゃりと手で打った。
「兄さん。声出したらバレるだろっ」
「あんたも声出したら侵入者確定喰らうぞ…」
 ヴァンの発言を裏付けるように、向こうが反応を示した。
「侵入者か!」
「殺せーっ!」
 乱暴に開かれたドアから、槍を手にした鎧姿の衛兵たちが遠慮もなしに襲いかかってくる。
「うわっ」
「あっぶ…!」
 レ・グェンは間一髪で一撃を避け、その隣にいたヴァンも槍の刃先を手で受け止め事なきを得る。
 こうなった場合、槍より早く相手に攻撃できるのは銃――つまりゼロスやリーザくらいしかいない。しかし、彼も彼で自由に動ける状態ではない。しかも殺してはならない相手ともなれば、攻撃できる範囲も狭まり、瞬時に反撃は無理だ。
「めんどくせえこと言いやがってあの野郎!」
 言いつつ何発か放ったゼロスだが、焼け石に水である。相手の勢いを抑えられる攻撃ではない。
 こんなところで後退かと思った彼らの後頭部が、不意に焼け付くような感覚を覚える。まさかと思い、振り向いた。
「皆さん、伏せてください」
 声の主はエトヴァルト。普段は端正な顔立ちに多少の優雅さを上乗せしているはずの彼が、いまは余裕の一つも感じさせず、白い皮手袋を凝視している。
 その重ねられた手のひらの中には、新緑色の輝きが生まれていた。まるで嵐の種のような、濃縮された魔力を持つそれは、一瞥で判断できるほど危険なもの。
「エド、まさか貴方は天魔を…!」
「何も言わないで下さいカルリーネ! これしか方法がないのです
!」
 切羽詰った四源聖のやり取りから察し、男たちはエトヴァルトの弊害にならぬよう、通路の隅に張り付いた。すると、我慢できないのか確認したのか分からない勢いで彼は顔を上げる。
「天魔、疾風!」
 声を合図に、狭い通路から広い城内へ向かって、風と言う名の凶器が兵士たちに向かい奔っていった。
「うぉっ」
「ぎゃっ」
 風は洪水のように兵を薙ぎ倒す。
 ある者は向かいの壁に体を強打し、ある者は床に叩き付けられ、ある者は仲間に巻き込まれそのまま倒れ伏す。盾を使い風から身を守ろうとしてもたちまち足元が浮いてそのまま吹き飛ばされ、抵抗しようと体を捩ったところでやはり吹き飛ばされる。
 掴みようもなく抵抗もできないそれに、この勝手口に詰め寄った兵士たちは見事に蹂躙されていた。
 その魔術の威力は敵に向けられたはずなのに、通路にいる彼らも必死だった。狭い通路に追い風が吹き込んで、通路の煉瓦や眼前の誰かの服に必死にしがみ付かなければ飛ばされそうになる。
「くっ……」
「あんた、ありがたいがもうちょっとなんとか…う、うわっ!」
 足元が浮きかけたヴァンが煉瓦の隙間に爪を食い込ませながらエトヴァルトを見るが、放った彼も必死な様子で堪えている。
「ではカルリーネに天魔を使い、水浸しにしてもらったほうがましだとでも言う気ですか!」
「そんなことになったら、全員風邪で忍び込むどころじゃなくなるな…っと!」
「ナイヅさん、軽口叩く暇があるならちょっと手回してー!」
 悲鳴に近いリーザの声にナイヅがその逞しい腕を寄越すと、リーザは命綱のようにそれに捕まる。
「わっ、わっ、わわわぁあっ!」
「ちょっ、ちょっとあんた、勝手にヒトの服掴まないでよ!」
「す、すみません、けどボクも飛んじゃいそ…!」
 小柄なノエルはまさしく吹き飛ばされそうになっている、というか足元は七割近く浮き気味である。
 服を破られては困るブリジッテは隣のイサクになんとかしろと言いかけるが、イサクの表情にも余裕は見られなかった。
「……何か?」
「な、なんでもないわよ…」
「天使さまーだめーあたしもうこのまま飛ばされてトマトみたいにつぶれちゃうようー!」
「もう少しの辛抱ですよ、ゼレナさん」
 ゼレナが抱きついて錘になっているようだが、翼のある彼らからすれば、この狭い室内では翼を使うとあの兵士たちの二の舞になりかねないのだろう。
 そうこうしているうちに兵士たちの声が聞こえなくなり、暴風も次第に弱く緩くなってくる。そうなれば素早いもので、彼らは風が完全に止むのも待たず、そのまま通用口を飛び出した。
 通用口制圧。予想外の体力の消耗は、まともに兵士たちとやり合った場合の消耗と比べると、何か違った疲労があった。
PR

Comment

お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード

Trackback

この記事のトラックバックURL:

プラグイン

カレンダー

06 2024/07 08
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31

リンク

カテゴリー

バーコード

ブログ内検索

アーカイブ