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涙のインク:Minoritenとこの


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涙のインク

 えーととりあえずシュウネとかアキラネとかナイヅネな人は読まないで下さい。読んで文句言われるように書いたも同然の代物ですから。
 あとうじうじした女とか自虐的な女とか被虐的な女とか嫌いな人も読まないで下さい。不快感を煽るだけです。
 じゃあなんで書くんだって言われたら書きたかったからです、としか言いようがないのですが。とりあえず魂2のあのスチルから燃魂であのスチルに到ったと判明してから非常にドス黒いものが管理人さんの胸の中に生まれたことをよくよく分かってくださると嬉しく思います。
 まあ続きものじゃないのが救いですが。いや全然救えないか。まあ救えないな。

 シュウネ成就版だと七橋のメインカポーのその後が理想的ですよ、と某さんをまた嘘屋会員になろうかと気にならせるようなことを言ってみる管理人さんでした。
 つーか旅行先から帰って来て一発目のブログがこれってどうなん。
 あとネバ研究所のメディアランド版見て予約すっかと意気込みましたがなんで秋葉原にしかないんですかキィイイイ!
「また、旅に出るつもりだ」
 あの人からそう言われた瞬間、わたしは軽い安心と絶望を覚えた。
 やっぱり予想したとおり、この人は一つところに留まれない人なんだと、分かったからだ。
 それと同じくらい、一つところに留まれない人なら、なんでわたしなんかを選んで結婚して、子どもをつくったんだろうと、いつもの悔恨が頭をもたげる。
 けど、そんな思いはおくびにも出さないまま、わたしは微笑んだ。
「いつか、そんな日が来ると思っていました」
「すまない…」
 あの人も苦笑を浮かべて頭を下げる。謝るつもりなら行かないでほしい。とことん鈍感か、とことん過敏か、どちらかであればいいと思うのに、この人はいつも半端に鋭く、半端に鈍い。
「道場はどうします?」
「閉じてある。今日、生徒たちに言ったよ。貯えはいくら残ってる?」
「一年は大丈夫です」
「そんなにか…さすがだな」
「子どもたちにはあなたから言ってくださいね?」
「分かってる。君任せじゃ、さすがに恨まれるからね」
 誰に。
 と問いたくなるけれど、答えは明確だ。わたしたちの可愛い子どもたちに、に決まっている。けれどわたしにも恨まれる資格があることを、この人は気付いているのだろうか。
「準備はどうします?」
「もう済ませてある。何かあったら、スカーたちを頼ってくれ」
「はい」
 学園都市の内部にあるこの家に、何かあることなんてないと思うけれど。
 食器を片付けながら彼が旅に出る理由を思い出すと、わたしは思わずため息をついた。
「アレックス君が家出なんて…ミュウったら、楽観的すぎるわ」
「はは…さすがに俺もそう思ったよ。あいつらは、自分の子どもだから大丈夫、なんて気持ちがありそうだしな」
 確かにそれはありえそうだ。何せアレックス君はあの年齢でこの人に太刀打ちできる能力を持つ。勇者と天使のハーフの血が入った、エリート中のエリート。普通の危機なら、彼一人で何とかなるに違いない。
「けど、剣の腕で全て解決できる訳ではないですからね」
「その通り。だから俺が行くんだよ」
 アルの両親どちらが行けば一番いいんだが…と、あの人は呟きながら席を立つ。
 そう、それが一番いいからこの人が説得すべきなのに、この人はそうしはない。それが無理だと分かっているから。
 けれど、だから自分が行って探しにいくなんて、それもちょっとどうかと思われることを、この人は分かっているのだろうか。
「…あなた」
「うん? どうかしたかな?」
 振り向かれ、良かれ悪かれ真っ直ぐな視線を当てられて、わたしは喉の奥が詰まる。
 言いかけた。行かないで、と。
 けれどこの人は旅に出ることもその準備も全部一人で決めてしまったから、多分わたしの懇願は無意味に終わる。
 この人の行動原理の中に、わたしの意志は含まれない。この人にとって、それと愛情は全く別のものなのだ。
「…その、気をつけてね」
「ああ、分かっている」
 その笑みを見て、小さく胸が痛む。
 この人にとって、わたしは善良な妻であり子どもたちの母でなくてはならない。――それが憐れな『都合のいい女』の在り方だとしても。
「これで暫くは見納めでしょうから、子どもたちの寝顔でも見ていてくださいな」
「そうするよ。君は?」
「戸締りの確認を」
「そうか、分かった」
 わたしたちは家の中で離れ離れに動き出す。子ども部屋に慎重な足取りで向かうあの人の後姿を見送ると、わたしも地下の物置へと降りていった。

 物置は相変わらず暗い。夜だから尚更、その暗さに深みがかかっているような気がする。
 けれどそれにわたしは恐れも何も感じない。もう既に慣れたし、この暗がりはわたしの秘密を隠すための闇だと思えば、むしろ愛しささえ湧いてくる。
 持ってきたランプを、物置の入口近くにある木製の勉強机の上に置く。それからその引き出しの鍵を開けて、古ぼけた手紙を取り出した。
 中身も見ずに、その手紙に付いた香りを胸いっぱいに吸い込む。けれどそこにわたしの求める匂いはなくて、ただ木の湿った香りと、わたしの体臭がそこにあった。
 潮の匂いは、そこにはない。
 ないけれど、なくなってしまうほど何度もこれを手にとって抱きしめたのはよく分かっているけれど、それでも自然と、この手紙に強く何かを求めてしまう。
 皺がつかないように、また抱きしめそうになる自分を制して、机に腰を下ろした。それから、いつもと同じく、机の上に指で文字を書く。
『こんにちは、お元気ですか』
 いつもの挨拶は変わらない。何百通を越える手紙になっても、二人の間には常に礼儀が横たわっていた。
 他の人からすれば他人行儀に見えるかもしれないけど、そのむず痒さがくすぐったくもあった。けれどそんな初々しい自分を思い出しても、今のわたしには痛みにしかならない。
『わたしが手紙を出さなくなって、あの家から出て行って、これで何通目になるでしょう。
けれどわたしは、あなたのことを一時たりとも忘れてはいません。これは本当です。』
 けど、それが真実だったところで、彼にはどんな慰めになるのだろう。わたしは彼を裏切った。彼を待たずにあの人の手を取った。あの人を拒まず受け入れてしまった。体ごと。
 それがどんな手酷い裏切りになるのか、わたしは理解しているのだろうか。理解しているのなら、何故こうも無様に彼にしがみ付くのだろうか。そんなことができる権利もないのに。
『今日、あの人にまた、旅に出ると言われました。やっぱりな、とわたしは思いました。
あの人は、家庭を築くには適さない性格だと思うから。一箇所に腰を据えて、何年もいるなんて、きっと無理なんです。けど、あの人はそれに気付いていないから、わたしを選んでしまったんです。
…わたしが家で閉じこもるしかできない女だと思うと、あの人の目は正しかったのかもしれませんね。
他の子たちなら、彼が旅に出ると言い出せば、きっと自分も付いていく、と言い出すでしょう。わたしは逆だから、あの人にとっては安心できるのでしょうね。常に、誰かを迎える準備ができているのだから。』
 溢れる思いと溢れる言葉は止められない。本当に、現実の彼にそんなことを言ってしまえば、失望され幻滅されるに決まっているのに、自分の激しさも醜さも止まらないし止められない。
『けど、わたしはあの人のために迎え入れる準備をしているわけではありません。本当に迎えたかったのはあなたです。
ごめんなさい、本当にごめんなさい。
資格はないけれど言わせてください。また、言わせてください。
いつも花を飾っていました。いつも清潔にしていました。いつもいつも、美味しいものを食べさせようと準備をしていました。いつも二人分のお揃いの食器は大切に磨いて、食器棚の奥に置いていました。
けどわたしはあなたを責められません。わたしのほうが待てなかったんだから。』
 彼の迎えを常に待った。途中、あの人が訪ねてきた。それも快く迎え送って、また彼を待った。弟や妹たちが大きくなっても待った。戦争が終わっても待った。
 そして戦争が終わって――あの人が迎えに来た。
『怖かった、あの人を拒絶したらどうなってしまうのか分からなかった。
きっとあの人は乱暴はしないだろうけど、また昔みたいに、この世界の全てに絶望するんじゃないのか怖かった。そうなる原因をわたしにしたくなかった。だからわたしはそうなりたくなくて、あの人の手を取った。』
 婚礼の式は学園で、しめやかに行われた。元学園生の同級生たちがたくさんいた。皆、あの人を眩しそうに見て、皆、わたしに複雑な顔で祝福してくれた。そのとき悟った。
『あの人は気付いていなかった。そしてわたしも思い知った。
わたしはただの可能性の一つに過ぎなくて、もっと沢山、彼を慕う子たちはいたんだと分かった。けれど彼女たちは、少し素直になれなくて、あの人に対しても憎まれ口やからかうような調子でしかいられなくて、素直に自分の気持ちをあの人に伝えることは、最後までできなくなってしまった。』
 ――ああ、なんてわたしは罪深いんだろう。
 彼を傷つけるのが怖くて受け入れて、結局多くの同級生たちを傷つけることになってしまった。
『シュウ、シュウ。
わたしはあの手を取るべきではなかったと、今は本当に悔やんでいます。
けれど、今のわたしを投げ出すことはできません。そうすればもっとあなたに嫌われるかもしれない。いいえ、あなたに何も知らせず結婚して、子どもをつくったわたしなんか、あなたが好きなはずはない。けれど、軽蔑されるのが怖いのです。
ごめんなさい、どっちつかずでごめんなさい。
あなたを忘れてあの人を純粋に愛すれば、彼女たちを踏み躙った罪悪感から逃れられるはずなのに。
あなたを裏切ってしまったことが、まだわたしの気持ちからあなたの姿を忘れることができません。
あなたに会って、あなたに罵ってもらえれば、きっと諦めがつくのに。』
 本当に?
 きっと今の彼に会えば、わたしはあの人のことなんてすぐに忘れてしまうだろう。彼の胸に抱きついて、愛の言葉を思いつく限り吐き出して、それから恋人同士のような口付けを求めるに違いない。
 そうして彼はそれにどう応じてくれるのだろう。
『取り乱しました、ごめんなさい。
では、もうそろそろお別れです。
わたしのことをあなたが忘れていますように。
それから、カーシャであなたが一番幸せになることを祈っています。』
 わたしはそう、空気のペンで書き終わると、地下から地上へと戻っていく。
 明るい世界は今のわたしには苦痛だけれど、ここから逃げる訳にはいかないと自分に言い聞かせて。

「ママ?」
 不意に下から聞こえた声に、わたしは微笑み応じる。
「どうかしたの?」
 そしてわたしはその手を取り、完璧な妻と母の仮面を被り直す。
 自虐的で最低な女の影を、決して見せないように。
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