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6~10:Minoritenとこの


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6~10

 どんどんいくよ~。
6/ニヴァ「鳥の止まり木亭」
マキ美「あーようやく着いた!」
シャロアーリャ「うう~人酔いしたっち……」
ゲイ子「うるさいねえ。
 あんたの言うとおり、ここまで運んだだけでもありがたいと思いなよ。
 そもそも、ヒヨコ虫が街中になんているもんかい」
シャロアーリャ「うっ……うるさいっち!
 そういうことには触れてはいかんっち!
 ……まったく、現代っ子ときたら……」
アキラ「現代っ子って……。
 お前、一体いくつなのよ」
シャロアーリャ「お前じゃないっち!
 ワシにはシャロアーリャという可憐で優雅な名前があるっち!」
アキラ「……呼びにくい。
 シロでいい?」
マキ美「いいわねえ。
 簡潔で覚えやすくて呼びやすくて、略称としてはぴったりじゃない」
ゲイ子「外見も白いしね、ちょうどいいんじゃない?」
シロ「キィイイイイー!
 誰がそんなことっ、て!?
 ネームタグが既にシロっちぃいいいいい!!」
マキ美「あらら、今は真っ赤だわ」
アキラ「ふふっ……」
ゲイ子「……やっと笑ったね。
 辛気臭いツラよりそっちのほうが、やっぱ可愛いわ」
アキラ「へっ……?」
マキ美「気持ちが落ち着いたみたいだから聞いていいかしら……。
 どうして追われていたの?」
アキラ「………………」
マキ美「言いたくないならいいのよ。
 話して楽になるかどうかは、あなたの気持ちの問題だからね……」
アキラ「……どうせ、信じないくせに」
ゲイ子「信じるかどうかはアタシら次第だ。
 話してみないと、その判断もできない」
アキラ「……わかったわよ」


7/「鳥の止まり木亭」続き
ゲイ子「……はあ。
 つまり、あんたは『チキュウ』の『トウキョウ』でぶらぶらしてるところを」
マキ美「空が眩しくなったと思ったらどこかの建物の中にいた。
 そのときもう女の体になってて、それから複数人のじいさんに囲まれて……」
アキラ「神の力、奇跡を見せよ、って言われた……んです。
 だから、多分、あたしは別の世界から来た、ってことになる……と思う」
ゲイ子「そりゃまた突拍子ないねえ」
アキラ「言うと思いました……」
マキ美「けど、あたしはアキラを信じるわよ。
 ……チキュウってところから来たってまでは」
アキラ「なんでそんな部分的なの!?
 だから言ったでしょ、あたしは、男なんだってば!」
マキ美「うーん……。
 けどどう見てもあたしの目の前にいるのはかわいーい女の子なのよね~」
ゲイ子「着てる服は男物っぽいけどね。
 しかし、いいトシした女の子がそんなブカブカのもの着なくても……」
アキラ「いやだから、これは男のときに着てたから……」
マキ美「もしそうだとしても、その格好で歩いてたら、いつズボンがずり落ちちゃうかわかんないわよ。
 あ、あたしが服選んであげても……」
アキラ「いいっ!
 それはいい、ですっからっ!」
マキ美「……えー。
 なんでそこまで拒絶的なのよ」
アキラ「だ、だって……。
 マキ美さんて、そういう格好が好きそうだし、それで、あたしもミニスカートとか選ばれるかもしれないし……。
 けどあたしは一応男だから、そういうのは、イヤなんですっ!」
マキ美「チッ」
ゲイ子「じゃあアキラ、あんたが自分で合う服選んできな。
 金は……、さっきの連中から巻き上げたのを売っ払えばいいか」
マキ美「じゃ、まず換金しに錬金所に行かなきゃね。
 それから服を着替えたら、気分転換に色々見て回ればいいわ」
アキラ「あ……ありがとうございます」
ゲイ子「……あー……。
 あのさ、ついでに一つ」
アキラ「え?」
ゲイ子「恩を忘れないって姿勢はいいんだけど、アタシには敬語とかむず痒くってね。
 さっきの調子でいいよ」
アキラ「あ……うん、わかった」
ゲイ子「じゃ、行っておいで」
アキラ「いってきます」
シロ「待つっち!
 てやっ!!」
ぽん! …ぽとん
アキラ「!?
 ……な、なによ急に飛び出して……」
シロ「ワシも連れていくっち。
 酒くさいのはイヤっち」
ゲイ子「結構だよ。
 ヒヨコ虫には酒のよさがわからないってんならね」


8/商店
マキ美「……これでいいの?」
アキラ「いいの。
 じゃ、着替えてくるから、お金ちょうだい」
マキ美「わかったけど……もう少し女らしい格好しなさいよー。
 いくら元男だからって、公然と女装できる機会なんてそうないわよ?」
アキラ「いいってば……。
 まあ、あたしの言ったこと、信じてくれてるのは嬉しいけど……」
マキ美「信じるわよ。
 ……アキラがいた方向に、ルネージュ公国って国があってね。
 その国は過去、異界の魂……つまりあなたと同じチキュウから来た人間を召喚していたの」
アキラ「……それ、本当なの!?」
マキ美「ええ……。
 異界の魂は、どんな人物であれ、召喚の過程で強大な力を得るわ。
 その力を目当てに、多くの者が異界の魂を召喚しようとした……。
 自分の目的が、自分の力だけで叶いそうにないと、思ったときにね」
アキラ「…………勝手な」
マキ美「多分、あなたもその手の連中に召喚されたんでしょうね。
 ……我ながら幸運だこと……」
アキラ「え……?
 今、なんて……」
マキ美「なんでもないわよ。
 それにしても、これはあなたにとっては不幸でしかないものね。
 呼び出した張本人じゃないけど、この世界の住人として、あたしにも責任の一翼を担わなきゃいけないと思う。
 だから、あなたが元の世界に戻りたいなら、あたしは全力を尽くしてその手伝いをしたい」
アキラ「…………」
マキ美「だめ、かしら」
アキラ「ううん、嬉しい。
 ありがとう……」
マキ美「うん。
 じゃ、もうちょっと可愛げのある服を~」
アキラ「それは断るってば!」


9/アルエット通り
アキラ「あれは……」
シロ「大道芸っちね」

???「じゃ、もうそろそろ小腹が減ってきたところだし……。
 お客さんがたには失礼ですが、ちょっと食事を取らせていただきます。
 けど、ただ食事するだけではちょーっとつまらないですからね、それらしく食べて見せましょう!」
がさごそ
???「これなーんだ?」
男の子「りんごとー、パンとー、ハムー!」
???「当たり。
 じゃ、ちょっと失礼!」
ぽん、ぽん、ぽん…
男の子「おてだまー?」
???「じゃ、いただきまーす」
男の子「えっ?」
???「はむっ、あむ、んむっ……」
わぁ…
男の子「すごいすごーい!」
???「ははっ、けど、ボクはこんな食べ方しちゃダメだよ~」
女性「そうよ、わかった?」
男の子「ええ~」

シロ「ほおう、なかなかの美男っち……」
アキラ「おまえ、メスだったの……?」
シロ「無礼なことを言うっち!」
???「喋った?」
アキラ「!!
 ちょっ、ちょっと行くわよ……」
シロ「むぐぐ……!」
タッタッタッタッタッタッ……タ……
アキラ「ここまで来れば……」
シロ「っぷ、ぷっ、むぐぅわー!
 し、死ぬかと思ったっち……」
アキラ「あ、あんたが大声出すからでしょ!
 もう、追っ手がどこにいるかも分からないのに、変な注目集めないでよ……」
シロ「むう……」
???「もしもーし、そこのキミ」
アキラ「へっ!?」
???「あ、やっぱり。
 そのヒヨコ虫だから、間違いないね」
アキラ「え、いや、あの……!」
???「そんなに慌てなくてもいいよ。
 言いふらしたり、変な目で見たりしないからさ」
シロ「なかなかいい気構えっち」
???「へえー、白くて手乗りサイズのヒヨコ虫なんて珍しいな。
 その上喋るし……キミのペット?」
アキラ「いえ……その、そんなんじゃなくて……」
???「……あのさ、俺、怪しく見える?」
アキラ「…………い、いえ、そんなことは…………」
???「けど警戒されちゃってるしなー。
 ちょっと話し聞きたいところだけど、キミがそんなんじゃね」
シロ「ナンパっちか?」
アキラ「は!?」
???「はは、そういうことにしといてくれていいよ。
 ちょっと挙動不審な美少女と、喋る謎のヒヨコ虫。
 そんな謎めいた組み合わせ、興味が湧いてもおかしくないと思うけどな」
シロ「なるほどっち」
アキラ「ちょっと、シロ、いい加減大人しく……」
シロ「ワシは大人しいし落ち着いてるっち。
 怪しいのはヌシのほうっち」
アキラ「えぇ!?」
???「うーん、反論できないねぇ。
 それじゃ、キミの落ち着けるところで話そうか」
シロ「それがいいっち。
 ワシたちは『鳥の止まり木亭』に泊まってるっち。
 今から……」
アキラ「し、シーロ!
 いい加減にしてよ!」
???「……だめなのかな?」
アキラ「いや、あの……。
 あ、あなたが悪い人には見えないんですけど、一応、他の仲間にも言っておきたいんです。
 あたしが、急に男の人連れてきて、誤解されたくないし……」
???「なるほど。
 じゃ、ちょっと経ってから、『鳥の止まり木亭』だっけ、そこに行くよ。
 それまでに、仲間に説明してくれれば……それで、いいかな?」
アキラ「あ、はい、わかりました……」
???「うん、じゃあまた会おう。
 俺の名前は……ニヴ貴でいいか。
 キミは信用してくれたら、名前を教えてくれるかな」
アキラ「あ、は、はい……。
 それじゃあ、あの……」
ニヴ貴「うん、また会おう」
たったったったったっ…
シロ「……着いた早々ナンパされるとは、ヌシも侮れないっちねえ」
アキラ「男にナンパされたって嬉しくない!
 ……けどあの名前、どっかで聞いたような気が……」


10/アルエット通り
????「………………」
子ども「ママー、あれ……」
母親「わっ、ワーウルフ!?」
????「………………?」
母親「ひぃっ」
ぽむ
子ども「わわっ」
なでくりなでくりなでくり
????「驚かせて、ごめんね」
子ども「ううん~」
????「そうか、ありがとう」
子ども「バイバーイ」
????「バイバイ。
 …………あ。
 ……あの子に、聞けばよかったな……」
どんっ
アキラ「んぶっ!」
????「あ、ごめん」
アキラ「……ふかふか?
 な、モンスター……?」
????「獣人だよ。
 こう見えてもちゃんとヒトだから、心配しないで」
アキラ「……そう、なの」
????「あ、そうだ。
 ちょっと道を聞きたいんだけど、いいかな」
アキラ「……え、けど、あたし、最近この街に来たばっかりだし」
????「それでもいいよ。
 待ち合わせまで時間もないから」
アキラ「ならもっと慌てなさいよ……。
 それで、どこに行きたいの?」
????「『鳥の止まり木亭』ってところ。
 キミ、知ってる?」
アキラ「……ええと、確か、そこの道を右に行けば着くはずよ」
????「そっか。
 ありがとう」
アキラ「…………。
 この世界のヒトって、ああいうのもいるの?」
シロ「それなりにいるっちが……あの獣人は特別っち」
アキラ「そうなんだ……」
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